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奇跡のとき
イレナ・ジャビコバ

何年も前ですが、ロシア南部の小さなボランティアセンターに住まい、そこで働いていたときのことです。クリスマスの一週間前に、猛吹雪によってその地域の基幹的な送電線が切断されてしまいました。停電がどれほど続くのかは誰にもわかりません。まず天候が良くならないことには、ケーブル修理のために被害のあった山中の地域に入ることさえできないのです。

その間、誰もが何とか生き延びようと頑張りました。大型スーパーはすべて閉店となり、小さな店ではロウソクのあかりと発電機が頼りでした。暖房が使えず、家々はすぐに冷え切り、電気コンロしかない人たちは、アパートの外で火を起こして料理しました。町の貯水槽が空になると、水も切れました。感謝することに、夜になるといくらか雪が降ったので、その雪を集めては溶かし、掃除や洗い物のために使いました。夜にはロウソクのあかりに集まり、ストーリーを話したり、歌を歌ったり、イエスの生誕場面のための人形を作ったりしました。

何日経っても電気が復旧する兆しはありません。とうとうクリスマス・イブとなり、クリスマス・ツリーにライトを飾っても仕方がないとか、昔のようにロウソクをツリーに飾ってはどうかと話し合っていました。でも同僚の一人は動じることなくこう言ったのです。「ライトを飾って、コンセントにつないでおくよ。神は奇跡を行って、クリスマスに間に合うように電気を復旧させることができるのだから。」

クリスマス・イブの夕食の支度をしているときにも、まだ電気はつきませんでした。イブの夜、準備がすべて整い、食卓の用意も済んで食事が並べられました。私たちは頭をたれて祈り、食べ物があること、また、キリストが幼子となって地上に来てくださったことに感謝を捧げました。そして、祈り終えて目を開けると、信じられないことに、家中のあかりがついていたのです。クリスマス・ツリーのライトもともり、はなやかに輝きを放っていました。まさに絶妙のタイミングです。神が自ら、奇跡的にスイッチをお入れになったわけではないとしても、このタイミングで電気がつくようにと一役買われたように思えるのです。

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